美麗にして美味。東広島の清らかな自然が育むジビエ『栄肉』
冷蔵ケースに整然と並べられた赤色が美しいシカ肉。つるりとしたつややかな質感は、みずみずしい果実を思わせます。「しっとりとした肉質で、ほのかに香るミルキーさ。シカの概念が変わるおいしさです」。手塩にかけて処理加工した肉の魅力を熱弁する和泉川さん。この人こそ、東広島市のジビエブランド『栄肉』の生みの親です。
『栄肉』になるシカ・イノシシは、東広島市の清らかな自然のなかで育ちます。東広島市は、一級河川の太田川水系・江の川水系などの源流域にあたる「水が生まれるまち」。「シカが川の水を飲んでいる光景を見たことがありますよ」と和泉川さん。水、栗やドングリなどの食物に恵まれた環境こそ、『栄肉』のおいしさの源泉です。
独自技法、徹底した衛生管理……。「おいしく安全なジビエ」のさらなる高みを目指す
『栄肉』の澄んだおいしさづくりは捕獲段階から始まります。和泉川さんが見せたのは止め刺しで使うナイフ。「血液を短時間でしっかりと出し切るには、弾力があり心臓の鼓動に合わせて動く頸動脈を確実に切開しなければなりません。このナイフはおいしいジビエづくりに欠かせない相棒です」。日頃から入念に手入れするナイフの切れ味は、肌をやさしくなでるだけで産毛が切れるほどです。
血抜き後に搬入した個体は、洗浄、解体、内臓摘出を経て冷蔵庫で1週間程度保管します。「あえて皮が付いた状態で保管しています。-2℃という低温帯でも、皮が“天然の保護膜”となり肉を冷風から守ってくれるので、1週間経っても肉の水分が適度に保たれてやわらかな肉質に仕上がるんです」と和泉川さんは説明します。
「よりおいしく、より安全なジビエをつくりたい」。和泉川さんはその一心で、皮付きのまま冷蔵保管する技法を築き上げました。搬入個体は94℃の熱湯を噴出する高圧洗浄機で5~10分かけて洗浄。解体時にはナイフを熱湯で都度消毒し、個体は電解水で解体工程ごとに洗浄します。さらに、冷蔵保管前には次亜塩素酸ナトリウムで殺菌するなど、ジビエの安全性を高める作業を幾重にも重ねていきます。 「安全性を実証するため、皮付き個体の表面付着菌、保管時の冷蔵庫内の空中浮遊菌など、様々な菌項目を測定しました。野生鳥獣肉の衛生分野に精通し、厚生労働省の野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針の策定にも携わった大学教授監修のもと、3年間にわたり測定し続けた結果、いずれの菌項目も国の基準値を大幅に下回っていました。長年の念願叶って、皮付き個体の清浄度の高さと『栄肉』の安全性を実証できた時はうれしかったです」と和泉川さんは技法確立の瞬間に思いをはせます。
和泉川さんの衛生管理へのこだわりは、施設に一歩入るだけで実感できます。ジビエを処理する空間とは思えないほど、シカ・イノシシ特有のにおいがありません。施設内は国産ジビエ認証にもとづく衛生管理によって常に衛生的に保たれています。この日、剝皮室では細かな溝まで念入りに清掃する専任スタッフの姿が。徹底したクリンネスの意識が、ジビエのおいしさを支えています。
食肉流通のプロと連携し、『栄肉』をスピーディーに飲食店に届ける
『東広島ジビエセンター』開設10周年を迎えたいま、『栄肉』は県内外の飲食店で愛用されています。市内の人気和食店では、シカのローストを季節の野菜を添えて提供。『栄肉』ファンは着実に増えています。「スライス・ミンチ加工にも対応しています。高性能スライサーで美しく立体的にスライスできますので、ぜひしゃぶしゃぶにどうぞ」と和泉川さん。飲食店ごとのニーズに応える精肉加工も『栄肉』人気を後押ししています。
『栄肉』を全国の飲食店にスピーディーに供給するのが食品卸会社『フレッズ』。曽田さんはかつて料理人として活躍し、現在は和泉川さんとともに『栄肉』の普及に尽力する“食肉のプロフェッショナル”です。「ジビエはストーリーを感じられる食肉」と話す曽田さんの想いとは……。「当社の強みは食品流通のノウハウ。『栄肉』を厳正な管理・流通体制のもと飲食店にお届けします。ジビエに『かたい』『クセがある』という印象を持つ方もいますが、『栄肉』を食べればイメージががらりと変わるはず。ジビエビギナーも大歓迎です!料理人の皆さんにとっての“橋渡し役”になりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください」(曽田さん)
曽田さんという心強いパートナーとともに、飲食店から寄せられるたくさんの期待に応えようと和泉川さんは意気込みます。「もっとおいしいジビエをつくりたいですね。私自身もジビエ職人としていろんな技術を取り入れながら成長していきます」 実直であり情熱的。『東広島ジビエセンター』はつくり手の人間味が感じられる『栄肉』で、ジビエの新たな概念を全国に伝えていきます。
