標高1,000mを超える高地にたたずむジビエ処理施設
信州富士見高原ファームは、まちの中心部から南アルプス方面に進んだ標高1,000mを超える地域にあります。ここでは里山や畑で捕獲されたシカを食肉に加工しています。戸井口裕貴さんは「シカを無駄なく活用しようと食肉処理を始めて10年、猟友会の皆さんと良質なシカ肉づくりに励んでいます」と話します。
国と県のガイドラインにもとづく安全・安心なシカ肉
おいしく安全なシカ肉は、捕獲から止め刺し、施設での処理までの工程をいかにスピーディーに完了できるかにかかっています。戸井口さんは猟友会のメンバーたちと捕獲状況を共有し、搬入スケジュールを組み立て、鮮度の良いシカを効率的に処理していきます。衛生意識がいきとどいた清潔な施設内で、シカの肉質を見極めながら切り分けていく戸井口さん。長年かけて築き上げられた戸井口さんと猟友会の連携が、スムーズな搬入・処理を実現しています。
食肉処理の要になっているのが、国産ジビエ認証と信州産シカ肉認証です。国と県のガイドラインに則った処理工程と衛生管理が、フランス人のシェフにも認められるおいしく安全な“富士見町のシカ肉”をつくり出しています。「国と県のガイドラインのほか、施設独自の取り組みとしてラベルに捕獲した集落名を記載しています。リクエストいただければ記録データをさかのぼり、『具体的にどの場所で』『誰が捕獲した』までお答えすることもできます」
ジビエに精通するアドバイザーとして、料理人にさまざまな情報を提供
シカ肉にまつわる具体的な情報を提供する背景には、「料理人の皆さんに富士見町の風土をイメージしていただき、より良いジビエ料理づくりに活かしてほしい」という戸井口さんの思いがあります。「ジビエはその地域の風土を色濃く映し出します。寒暖差のある高地の気候、南アルプスの雪解け水、エサとなる食物……。富士見町のシカ肉を育んださまざまな要素が、料理人の皆さんのインスピレーションを呼び起こし、魅力的なジビエ料理につながればなによりです」
戸井口さんは信州富士見高原ファームのほか、日本ジビエ振興協会の理事・講師、農林水産省のジビエ利活用コーディネーターとして活動しています。ジビエを安全に食べるための処理方法を広め、料理人や食品企業のジビエ活用をサポートする姿は、まさに日本ジビエ界の旗振り役。ジビエをメニューに取り入れたい飲食店にとって、ジビエの基本から応用まで熟知する戸井口さんは頼れる相談相手です。
そんな戸井口さんがおすすめするのは、シカ肉の一頭買いです。かなりスケールの大きな話かと思いきや、信州富士見高原ファームでは一頭買いを気軽に始められます。「人気部位のロースとヒレをはじめ、モモ、ネック、スネまで、シカ肉のおいしさを余すところなく味わえます。個人店や小規模店向けに同じシカの全部位を小ロットで提供できますので、富士見町のシカ肉の魅力を引き出す、バリエーションに富んだメニューを開発していただけたらうれしいです」
ジビエがもっと身近な食材になる未来を目指して
戸井口さんが目指すのは、たくさんの飲食店でジビエ料理が親しまれる未来。その実現に向けて、信州富士見高原ファームではシカ肉を安定的に供給できる体制づくりを進めています。「飲食店からのオーダーに対応するための量を用意するのはもちろん、1年を通して価格を安定させたいと考えています。シカは自然界に生息するだけに、数が限られた希少な食材と思われる方もいるはずです。『シカ肉を使ってみたい』『シカ肉を通年メニューとして提供したい』という料理人の皆さんの創作意欲に応え、ジビエをより身近な食材として扱っていただけるよう、信州富士見高原ファームはこれからも成長し続けます」